考察

進化する局所麻酔

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論文 麻酔

どんなに痛みに強い屈強な人でも、歯医者で麻酔注射の痛みが好きな人はいません。

歯肉の粘膜に針を刺入するとき、針を深く進めるとき、圧をかけて薬剤を注入するときに痛みが続きます。ましてや子供にとって、注射ほど嫌なものはありません。

歯科の局所麻酔は、敏感で、薄い粘膜に針を刺し、麻酔薬を注入しながら骨膜に進め、その位置を維持しながらゆっくり薬剤の加圧注入を維持しなければなりません。

ここで、表面麻酔を併用し、極細の針を使えば痛みは大幅に軽減します。極細の針を使って手動でゆっくり加圧注入することは大変な労力ですが、それを電動注射器に任せると、術者は刺入し、針を進め、その位置を維持する操作だけに集中することができ、ストレスが少なく、患者にとっても痛みの少ない麻酔注射が可能になります。

次に、処方目的に応じた麻酔薬の使い分けは、事故防止の観点からも検討すべきである。

局所麻酔薬といえばキシロカインというように、キシロカインが一般名のように使われてきました。キシロカイン注射液は1952年に開発され、歯科用は1963年に発売開始され、現在もなお主役の座にあります。キシロカインは、1990年に販売が始まったオーラ注(昭和薬品化工)と、その翌々年に売り出されたキシレステシンA(白水)にトップの座を譲っていますが、これに最近発売になったエピリド配合注(輸入ニプロ)の4商品はいずれもリドカイン塩酸塩を有効成分とし、血管収縮剤としてアドレナリン系の成分を使うリドカイン系薬剤です。

また、最近の調査では、シタネスト(オクタプレシン)やスキャンドネスト(日本歯科薬品)が増えてきています。これは、特に薬物アレルギーを警戒して血管収縮剤や防腐剤・酸化防止剤を含まない薬剤が選ばれたものと思われます。局所麻酔薬の成分のうちアレルゲンとなりやすいのは、麻酔有効成分よりも防腐剤として添加されているパラオキシ安息香酸メチルやph調整剤のピロ亜硫酸ナトリウムと言われています。

スキャンドネストは、アレルギー患者が増加していることや、高血圧や糖尿病で血管収縮剤を避けたい患者が増えていることを考えると、とても有効な薬剤です。

外科的侵襲が大きく止血効果を期待する外科処置などではリドカイン系が必要ですが、侵襲の小さな処置では麻酔効果が長く続かないことも患者さんにとっても大きな利点となります。事故防止の観点からも、局所麻酔の目的に応じた使い分けが必要となってきています。

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