考察

ジルコニアについて

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インプラント 論文

 歯科治療においてジルコニアは、矯正装置(ブラケット)、ラミネート、クラウン・ブリッジ、インプラント、インプラントと人工歯をつなぐ土台(アバットメント)、切削/研削/手術器具などに応用されており、メタルフリーの実現に貢献しています。

日本国内において最初に製造販売承認を受けたジルコニアはDentsply社のセルコン(Cercon)で、2005年4月でした。それ以降、多くのメーカーが参入し、今日に至っています。そして、歯科用CAD/CAMシステムの発展とともに、新しい素材および従来品との融合が進んでいて、ジルコニア固有の材料特性が活かされています。

日本におけるジルコニアの第一人者、愛知学院大学歯学部歯科理工学講座の伴 清治先生によると、ジルコニアは大きく分けると3種類に分類されるそうです。

 純粋ジルコニア(ZrO2)、部分安定化ジルコニア(YまたはCe-ZrO2)、安定化ジルコニア(Ca-Zro2)、に分類されます。さらに結晶構造により正方晶・長方晶、立方晶、単斜晶に分類されます。

初期の歯科用ジルコニアは、部分安定化で正方晶・長方晶が使われていました。ただし、Y(イットリア)やCeが含有しているため透明感がないため、審美的ではありませんでした。現在では、さらに進化して、透明感を有した純粋ジルコニアで単斜晶のジルコニアと機械的強度の強い部分安定化ジルコニアの両方の特徴を有した素材が開発させてきました。前歯などの審美領域でもジルコニア単体で治療が可能になってきています。

よく、ジルコニアは強度が強すぎて、かみ合わせる自分の歯を削ってしまうと言う歯医者がいます。しかし、伴先生の研究によると、従来のやわらかいセラミック・クラウンは術後2年で表面が摩耗し、ザラザラになります。その粗造な面がヤスリのように作用して噛み合わせる天然歯を削ってしまいます。逆に、研磨(ハイポリッシュ)されたジルコニアは天然歯を削ることがなく、かみ合わせが変化することもないので、長期的に壊れにくく、自分の歯に対しても優しいことが解っています。

ただし、”ジルコニアはホワイトメタル”という紹介が良くされていますが、ジルコニアは金属ではなく、セラミックスであるということです。ジルコニアは金属のような光沢はなく、電気も熱も伝えにくい素材です。また、塑性変形はほとんどせず、金属のような展延性はありません。しかし、ジルコニアはセラミックスの中では群を抜いて高い曲げ強さと破壊靭性値を示します。例えば、同じ形状であれば純チタンと同等またはそれ以上の曲げ強さを示します。ところが、ジルコニアは耐力を超えると破断します。一方純チタンは耐力という限界を超えると曲って塑性変形はしますが破断はしません。また、ジルコニアは光屈折率が大きく、結晶粒界内温度では高い化学的安定性を示しますが、100℃以上の高温では反応性を示します。このように、ジルコニアは歯科材料として完璧な性質を有しているわけではなく、利点・欠点を有しています。

これらチタン、ジルコニア両方の特徴を活かした歯科インプラント臨床応用が、ストローマン社のロキソリッド(Roxolid)であり、TiZrチタンジルコニア・インプラントであります。

通常のチタン製インプラントより疲労強度が24%向上していて、より優れた骨結合を可能にしています。

今後の展開としては、超親水性ジルコニアの研究開発が進んでいます。将来的にはジルコニアと軟組織の結合も可能になると思います。

ジルコニアは、適材・適所を考慮すれば、今後も歯科臨床応用が進展していくものと期待しています。

そして、世界的に見ても、日本がジルコニアに関してはリードしています。

 

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